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?[. 限界および今後の課題
1. 限界:今回の調査は栃木県内で出産予定の妊婦2006名を対象として行ったものであり、一般化はできない。さらに調査数を増し、全国に広げて行うことが必要である。
2. 今後の課題:
妊婦およびその家族が希望する出産を主体的に行うために、我々医療関係者は対象のニーズを的確に把握し、それに沿って援助することが重要である。今回は、まず妊婦のニーズを調査した。
その結果、妊婦は多くのニーズをもっていることがわかった。例えば分娩方法はなるべく何もしない、自然な出産を希望していた。また、分娩時の過ごし方は、拘束や制限されないことを望んでいた。分娩時の家族の参加、特に夫の参加する出産を望んでいた。心理的に満足のいく出産を望み、出産直後に児との接触を希望していた。医療関係者へ今後の分娩進行の説明や処置・方針の説明を求めるなど多くの事柄を希望していた。しかし、こうしたニーズがある一方、分娩時の処置は現状を肯定している、分娩体位の希望がない妊婦が多い、医療関係者への態度は「おまかせ」であるなど、きわめて消極的態度である。また、過去の分娩経験がそのまま肯定されており、医療関係者へ新たな希望や期待が少ないことが結果から示唆された。出産予定施設別には、それぞれ施設選択の理由がニーズに一致していた。学歴別では高学歴の方がより積極的な取り組みをしていた。
地域性あるいは県民性に関しては、新聞記事にみるように栃木県は、医療・福祉に関する対応が遅れており、こうした環境に住み慣れた人にとっては、これらが当然と考えられているのではないだろうか。
上記の結果から私たち助産婦あるいは医療関係者は、希望する出産に対象自らが主体的に取り組み、満足のいく経験とするために、対象が自分で行動しない分、ケア提供者から働きかけを行って対象のニーズを引き出す必要がある。対象は遠慮深く、自ら申し出ることなど考えられない環境にあったかもしれない。ケア提供者は、ケアの受け手である妊婦および家族の多様化したニーズを的確に把握し、それを満たす努力が必要である。単に正常分娩、安産だけでは満足な出産体験とはいえないことを再認識し、常に対象主体のケアを考え、実践していかねばならない。
最後にアンケートにご協力下さった妊婦の皆様、そして今回の調査の趣旨をご理解くださいましてアンケートの実施に多大なご協力をいただきました病院長・看護部長はじめ多くの医療関係者の皆様に心から感謝いたします。

 

 

 

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